食品を扱う事業者にとって、食中毒や異物混入を防ぐための衛生管理は欠かせません。そこで広く採用されているのがHACCP(ハサップ)です。しかし、名前は聞いたことがあっても、具体的にどのような仕組みなのかよくわからない方もいるでしょう。本記事では、ハサップとは何かを簡単に説明し、導入するメリットについて解説します。
食品の安全を守るハサップの基本を理解しよう
HACCPは食品の安全性を高めるための衛生管理手法です。まずは基本的な考え方と名前の意味について見ていきましょう。
HACCP(ハサップ)の意味と考え方
HACCPとは、食品の製造や調理の工程ごとに危険な要因を見つけ出し、問題が発生しないように管理する衛生管理手法です。従来の方法では完成した食品を検査して安全性を確認することが一般的でした。しかし、この方法では検査した製品以外に問題が残っている可能性があります。
一方でHACCPは、原材料の受け入れから製造、加工、出荷までの各工程を確認しながら管理を行います。そのため、問題が発生する前にリスクを減らしやすいことが特徴です。食品の安全性を高めるだけでなく、衛生管理の仕組みを見える化できるため、多くの国で採用されています。
HACCPの名称の由来
HACCPは英語のHazard Analysis and Critical Control Pointの頭文字を取った言葉です。 Hazard Analysisは危害要因分析、Critical Control Pointは重要管理点を意味します。 危害要因分析とは、食品に悪影響を与える可能性のある危険を洗い出すことです。
そして重要管理点とは、危険を防ぐためにとくに注意して管理する工程を指します。 つまりHACCPとは、食品に関わる危険を分析し、重要な工程を継続的に管理する考え方だといえます。
食品事業者に求められるハサップ対応
HACCPは現在、多くの食品事業者にとって重要な取り組みとなっています。ここでは義務化の背景や内容について解説します。日本では食品衛生法の改正により、HACCPに沿った衛生管理が制度化されました。
改正法は2020年6月に施行され、2021年6月から完全義務化されています。対象となるのは、食品の製造や加工、販売、調理などを行う幅広い事業者です。ただし、事業規模や業種によって求められる管理方法には違いがあります。
大規模な食品製造事業者などは、HACCPに基づく衛生管理を行う必要があります。一方で、小規模な飲食店や食品販売店などでは、業界団体が作成した手引書を参考にしたHACCPの考え方を取り入れた衛生管理が認められています。
ハサップと従来の衛生管理は何が違う?
HACCPの特徴を理解するためには、これまでの検査方法との違いを知ることが大切です。
完成品を確認する従来の方法
従来の衛生管理では、製造が終わった食品を抜き取って検査する方法が中心でした。この方法は最終的な品質を確認する上では有効ですが、検査していない製品の安全性まで保証できるわけではありません。また、問題が見つかった場合にはすでに製品が完成しているため、大量の廃棄や回収が必要になる可能性があります。
工程全体を管理するHACCP方式
HACCPでは、食品製造の各工程を継続的に管理します。たとえば、加熱工程では充分な温度に達しているかを確認し、冷却工程では適切な温度で管理されているかを記録します。
つまり、完成後に検査するだけではなく、製造の途中から安全性を確保する考え方であることが大きな違いです。そのため、食中毒や異物混入などのリスクを減らしやすく、より高いレベルの衛生管理につながります。
ハサップを導入することで得られるメリット
HACCPは義務化への対応だけでなく、事業運営にもさまざまなメリットをもたらします。ここでは代表的な利点を紹介します。
食品事故のリスクを減らせる
HACCPでは危険な要因を事前に分析し、重要な工程を管理します。そのため、食中毒や異物混入などの事故が発生する可能性を低くできます。
問題が起きる前に対策を講じられることは、大きなメリットです。食品の安全性向上は、消費者からの信頼獲得にもつながります。
衛生管理の見える化ができる
HACCPでは管理状況の記録が重要です。どの工程をどのように管理しているのかが明確になるため、衛生管理の状況を把握しやすくなります。
担当者による作業のばらつきも抑えやすくなり、安定した管理体制を構築できます。新しい従業員への教育にも役立ちます。
問題発生時の原因究明がしやすい
管理記録を残しているため、万が一トラブルが発生した場合でも原因を追跡しやすくなります。どの工程で問題が起きたのかを確認しやすいため、再発防止策を検討しやすくなります。迅速な対応が可能になると、被害の拡大防止にもつながります。
国内外で求められる衛生基準に対応しやすい
HACCPは国際的に認められている衛生管理手法です。そのため、導入によって取引先からの信頼向上が期待できます。
また、海外市場への展開を検討している企業にとっても重要な取り組みです。今後ますます食品の安全性が重視される中で、HACCPへの対応は企業の競争力向上にもつながります。
まとめ
HACCP(ハサップ)とは、食品製造や調理の工程ごとに危険を分析し、重要なポイントを管理することで食品の安全性を高める衛生管理手法です。従来のように完成品だけを検査するのではなく、製造工程全体の管理によって、問題の発生を未然に防ぐことを目的としています。食品事故の予防や管理体制の強化、原因究明のしやすさなど多くのメリットがあるため、食品を扱う事業者にとって重要な取り組みといえます。