
物流業界は、2024年にトラックドライバーの労働時間の上限が設けられるようになったことによる輸送能力の低下が問題視され、何かと注目される業界となっています。そんな物流・輸送業界は、HACCPが必要となってくるというのをご存知でしょうか。今回は、物流・輸送業界でのHACCPの導入やその対応などについて、詳しく解説します。
HACCPの管理方法や目的
いきなり、HACCPと聞いてもピンとこない方もいるかもしれません。そのため、まずHACCPとは、いったいどのようなものなのかを解説します。
そもそもHACCPとは、食品の安全性を確保するための衛生管理手法となっており、原材料の受入や製造、製品の出荷までの工程で、食中毒などの健康被害を発生させる危険のある要因を科学的根拠にもとづいて、コントロールする方法です。
フローチャートなどを作り、工程を見える化して、問題のある製品などの流出を未然に防げることが可能となってくるのです。
管理方法は2パターン
HACCPを実施する際の管理方法は2パターン存在しています。
1つ目は、HACCPにもとづく衛生管理の対象事業者です。こちらは、大規模事業者と捉えられることが多く、対象の例としては、製造に関わる方が50人以上で、畜場・食鳥処理場などが挙げられるのが特徴です。
2つ目は、HACCPの考え方を取り入れた衛生管理です。こちらは、食品製造や加工業者、小売販売などが挙げられます。こちらの2パターンを覚えておいて、自分がどちらに当てはまるのかを、チェックしておきましょう。
HACCP導入までのステップ
こちらでは、HACCP導入までのステップを解説します。まずは、HACCPチームを作ります。メンバーは、HACCPの知識を有している方を選ぶのがベストといえるでしょう。次に製品の名称や種類、原材料などを書き出します。
その後、製品の特性をチェックします。こちらは、どのようにして調理・消費するのかを把握して、管理するのがおすすめです。次にフローチャートを作成して、そのフローチャートと現場の状況にギャップが生じていないか確認します。
その後は、各工程で危害要因の可能性があるものを洗い出し、対処方法を考えます。そして、その要因を取り除くための重要管理点を決定して、適切に排除できるかの基準を定めた後、監視方法も決めていきます。
その後、管理基準が守られなかった際の改善方法を決めて、決定した衛生管理がきちんと機能できるか検証するための方法を決めます。最後に実施した内容を記録して、その保存方法を決めるという流れです。
HACCPは物流に関係ある?
上記で、HACCPの管理方法や目的、導入までの流れについて解説しました。上記の内容だと、「物流にHACCPは関係ないんじゃないか?」と感じる方もいるかもしれません。しかし、実は物流にもHACCPは関係してきます。
HACCPは、食品の製造からお客さんが食品を食べるまでの安全を管理するシステムです。そのため、飲食業界に関わりのある物流会社も食品の事故を未然に防ぐためには、HACCPを実施しなくてはならなくなってくるのです。
とはいっても、食材や食品を扱うすべての物流企業がHACCPを実施しなければならないというわけではありません。下記では、物流会社でHACCPが対象になるケースとならないケースについて、詳しく解説するので、ぜひ参考にしてみてください。
対象のケース
物流業界におけるHACCPの対象とは、温度管理が必要な食品・食材の運搬や保管を実施する会社を指します。食品製造から販売までの間にある物流で温度管理に問題が発生した場合、食品事故が起こる可能性があります。
しかし、物流会社のHACCPは重要管理点が存在しないのが一般的となっているため、一般衛生管理が中心と考えてもらうのがよいでしょう。このように、物流企業におけるHACCP構築は、とくに難しいものではないというのを覚えておきましょう。
対象にならないケース
上記でも説明したように、食品・食材の運搬や保管を実施する会社であっても、HACCPが必要ないケースもあります。
例を挙げると、常温保管の食品・食材を運搬しても食品事故になる危険性は低いため、HACCPの実施は任意となってきます。このような常温管理の食品・食材は、HACCP前提の一般衛生管理を実施するのがよいでしょう。
一般衛生管理を守ることがHACCP準拠の第一歩に!
基本的に、物流企業はHACCPの重要管理点がないため、温度管理の中心とした一般衛生管理をきちんと構築することが重要となります。下記では、構築する際のポイントについて、詳しく解説します。
異物混入の防止
異物混入の防止は、一般衛生管理をきちんと実施するうえで、重要なポイントとなってきます。食品や食材の包装が破れないようにするだけでなく、窓から異物が混入しないように、フィルターを設置するなどして、対策を講じることも重要といえるでしょう。
温度管理
食中毒などは、温度管理を怠ると発生する危険性が非常に高まります。そのため、食材を保管する際には、菌を増やさないように、管理シートなどを作るようにして、決まった時間に記録できるようにしておくのが、おすすめといえるでしょう。
本人の衛生管理
食材の保管や運送を行う方の衛生管理も重要です。製造者と同じくらいの衛生管理を徹底的に意識することがポイントといえるでしょう。
まとめ
今回は、物流・輸送業界に要求されるHACCPとはどのようなものなのか、そして導入する際の対応方法などについて、詳しく解説しました。不備のある製品が出荷されてしまうと、後々大きな問題となってしまい、そうなった際の損害は計り知れないものとなります。最悪の場合、会社が潰れるほどの損害になる可能性があるため、そうならないためにも、HACCPというのは重要になってくるのです。物流・輸送業界で働いている方は、ぜひ今回紹介したHACCPについての解説を参考にして、実施してみてください。