
ホテルの利用者数は、外国人を中心に増加しています。為替が円安となっているため、外国人が日本に旅行に来るようになったのが、利用者増加の要因といわれています。そのため、ホテルに勤めている方は、これまで以上にお客さんの安全や衛生を守っていく必要があるのです。今回は、そんなホテルの衛生管理について詳しく解説します。
ホテルでもHACCP導入は必要になる?
まずは、HACCPとはいったい何なのかを解説します。HACCPとは、食品の安全性を確保するための衛生管理手法です。原材料の受入や製造、製品の出荷の工程に至るまで、食中毒などの健康被害を発生させる危険のある要因を科学的根拠を用いて、コントロールする方法です。
HACCPは、元々食品工場や多くの飲食店などで導入するルールとなっていました。しかし、近年だとホテル業界でも導入の動きが進んでいます。
基本的にホテルは、レストランやサービスで食事する機会があります。HACCPは、基本的に飲食を提供する場合は導入しなければいけません。そして、ホテルもその例に漏れず必要となってくるのです。
HACCPの由来
HACCPの始まりは、NASAで宇宙食の安全性を確保するのを目的に開発されたものです。その後、食品衛生管理手法として、世界に拡散されました。
日本では、2018年に食品衛生法が改正されたことにより、2020年から義務づけられるようになりました。そして、その翌年の2021年からすべての食品関連事業者への適用が始まっていったのです。
衛生管理方法
HACCPの衛生管理方法の種類は、規模の大きさによって分けられます。小規模になると、HACCPの考え方を取り入れた衛生管理となります。その対象は、食品製造や加工業者、小売販売などです。
対して、大規模事業者となると、HACCPに基づく衛生管理が必要となります。対象の例としては、製造に関わる方が50人以上であったり、畜場・食鳥処理場などです。
このように、条件や対象によって、管理方法が変わってきます。経営するホテルがどちらに当てはまるのか、しっかりとチェックしておきましょう。
食中毒の発生状況
ホテルや旅館で発生した食中毒の実際の発生状況を調べてみると、毎年数件・数百人の食中毒による被害が発生しています。
この件数は年々減ってきてはいるものの、一度の食中毒で多くの被害が発生することもあるなど、その影響は事業運営や評判に深刻なダメージを与えることになります。
HACCPは、こうした食中毒リスクを減らしていくための取り組みとして、非常に重要です。
ホテルでのHACCP導入でやるべきこと
次に、実際にHACCPを導入する際に実施すべきことについて解説します。HACCPには、利用方法が分からない方のために、手引書があります。
しかし、それを見てもHACCPを導入する方法が分からない人もいることでしょう。下記では、そんな人のために、HACCP導入でやるべきことをまとめたので、ぜひ参考にしてみてください。
HACCPチームをつくる
導入する際には、各部署から知識を有しているメンバーを選んでチームを作ることが重要です。そして、チーム内で役割を明確に決めることで、導入までにスムーズに進められます。さらに、定期的に会議を開いて計画を立てることで、HACCPの改善や実施が期待できるようになります。
製品の記述
ホテルで提供するすべての食品や飲料の種類・成分・調理方法を詳しく記載して、製品リストを作成することも重要なポイントです。このようにすべてを文書化することで、スタッフが情報を共有できるようになります。また、リストを定期的に見直して、常に最新の製品情報を維持していくのも大事なポイントです。
用途の確認
ホテルで使用される食品がどのような目的・用途で消費されるのかを把握して、それに応じた管理を実施しておくことも重要です。さらに、保存方法や提供するまでの時間なども明確にしておくことで、リスク回避も目指しましょう。
製造工程のフローチャート
食材の受け入れから調理、保存、お客さんへの提供まで全工程がわかるようなフローチャートを作成します。そして、工程ごとに大事なポイントを記載しておくことで、スタッフが製造プロセスを理解できるようになります。
フローチャートの確認
作成したフローチャートを現場でチェックして、工程と実際の作業が合っているのか検証していきます。問題点があればフローチャートを修正して、より現場に沿った内容にしましょう。
まとめ
今回は、HACCP義務化によるホテル・旅館の衛生管理について詳しく解説しました。お客さんに料理やサービスを提供する際には、衛生管理は1番重要になってくるポイントです。衛生管理が行き届いていないと、提供した料理などで、お客さんが体調を崩す危険性があります。そうなった際の損害は計り知れないものとなり、最悪の場合は店やホテルを閉めることになってしまいます。そのような最悪の事態を招かないために、HACCPが存在しているのです。ホテルや旅館を経営している人は、今一度自分のホテルがHACCPをきちんと実施しているのか、確認してみてはいかがでしょうか。